統合医療を掲げる医療機関は、年々増加しています。しかしまだまだ発展途上の医療である感は否めず、「統合医療」という名前に内容が追いついていない施設も多いのが実情です。
最近、特にアメリカにおいては、補完・代替医療(CAM)を掲げた学会が統合医療(integrative medicine)と看板を変えつつあります。これは世界的な流れで、日本でも「統合医療」を掲げた医療機関や学会等が増加しています。では、日本における統合医療は、どのように機能しているでしょうか?
私は、「統合医療とは、個人の年齢や性別、性格、生活環境、さらに個人が人生をどう歩み、どう死んでいくかまで考え、西洋医学、補完・代替医療(CAM)を問わず、あらゆる療法からその個人にあったものを見つけ、提供する受診側主導医療」と定義してます。しかし実際には、「統合医療」という言葉が広がりを見せる一方で、その定義はいまだ統一されていません。実はこれこそが日本における統合医療の現状であり、大きな問題を生み出しているのです。
統合医療を掲げる医療機関がいくら増えても、その言葉の共通認識がぶれているので、医療の中身はまちまちです。たとえば西洋医学と漢方薬以外は扱わない施設や、西洋医学にサプリメントを処方するだけのもの、西洋医学にアロマセラピーのみを加えたもの、さらには西洋医学を否定したり医師の関与しない施設などもあり、もはや無法地帯といってもいいくらいです。こうした現状を早急に是正するためにも、統合医療という言葉の統一が不可欠になります。
また、日本では統合医療以前に、相補・代替医療(CAM)への取り組みが非常に遅れています。海外の国々との比較は別の回で詳しく紹介しますが、たとえばアメリカではCAMに関する研究・調査費用に年間1億ドルもの予算が計上されています。対する日本では、まだCAMに取り組む政府機関も存在しません。近年、ようやく日本統合医療学会を中心に、数百万円から数千万円の研究費が認められるようになりましたが、つい最近まで日本はCAM鎖国状態だったのです。その結果、不適切と思われるCAMおよび治療家(施設)も横行してきました。
ここでいう「不適切」とは、ヒトに“身体的、精神的、社会的あるいは経済的に被害を及ぼす”という意味です。CAMは本来、西洋医学に比べて“ヒトにやさしい医療”という利点があります。しかしそれを扱う治療家が“やさしくない”のでは意味がありません。根拠もなく西洋医学をむやみに否定するもの、経営戦略のみを考えたもの、患者の弱みにつけこむもの、悪意はなくても“この治療法は効くんだ、絶対に治るんだ”と思い込み、患者に強要するもの……そういった治療家によって、被害を受けてきた患者や消費者が存在するのは事実です。そして今も無資格のCAM治療家が増加しつつあるのです。
こうした日本の現状をみる限り、不適切CAMの摘発機関や、CAMの教育施設の認定制度が急務といえるでしょう。また、「○○でがんは治る」などのバイブル本や広告などに関する規制はようやく始まりましたが、逆に適切な情報まで伝わらなくなる可能性もありますので、情報の取捨選択をする公的機関も欲しいところです。いずれにしても、現状においては
@必ず治るというCAM治療家(施設)
A西洋医学やほかの治療(家)を否定するCAM治療家(施設)
B法外に高額を要求するCAM治療家(施設)
のようなCAM施行者・施設は選択しないよう、注意することが必要です。
不適切なCAM治療家や施設が増加したのには、実は西洋医学を扱う側にも問題があります。一方的に西洋医学を否定するCAM治療家がいるのと同じように、CAMというだけで一律に否定する医師も少なくないのです。西洋医学者とCAM治療家の対立は依然として深く、双方の交流の場もほとんどありません。それが統合医療の発展を遅らせる一因となっています。
統合医療を実践する医師の最低条件として、私が常々口にしていることは「西洋医学の一流医であること」、治療家であれば「西洋医学の一流医といつでも一緒に評価できる環境を整えていること」です。この最低条件を満たし、西洋医学にもさまざまなCAMにも通じた上で、初めて統合医療の医師あるいは治療家として「人間をみる」ことができるのです。
このような観点から、私は、私の定義する真の統合医療を組織・教育できる人材を育成するために統合医療塾を設立しました。現在は医師、歯科医師、獣医師だけに門戸を開いていますが、いずれは他の医療関係者、さらには一般の方も受け入れようと考えています。
統合医療塾は、真の医療、統合医療の実現を目指します。
プロフィール
川嶋 朗(カワシマ アキラ)
現職:東京女子医科大学附属青山女性・自然医療研究所 自然医療部門 准教授
(東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック 所長)
〒107-0061東京都港区北青山2-7-13
電話 03-5411-7192、Fax 03-5411-5781
東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター内科&血液浄化療法科 准教授(兼任)
東京女子医科大学附属青山病院 准教授(兼任)
〈主な役職、学会など〉
日本内科学会 認定医・専門医・指導医
日本内科学会認定専門医会 評議員
日本腎臓学会 学術評議員 認定専門医・指導医
日本透析医学会 評議員 認定医・指導医
日本医工学治療学会 評議員・外保連委員
日本アフェレシス学会 評議員
日本統合医療学会 理事・中医デジタルアーカイブス委員長
日本代替・相補・伝統医療連合会議(JACT) 実行委員 認定医
日本ホメオパシー医学会 理事 認定医・専門医
日本東方医学会 理事・学術委員
国際生命情報科学会(ISLIS) 理事
国際統合医学会 理事
日本サプリメント協会 理事
日本東洋医学会 広報委員
日本抗加齢医学会 評議員
日本ホリスティック医学協会 運営委員
心身医学臨床研究会 会長
冷え研究会 世話人
植物・芳香医学フォーラム 評議員
日本免疫病治療研究会 幹事
維持透析患者のための補完・代替医療研究会(HD-CAM) 世話人
気の医学会 世話人
日本エネルギー医学協会 会長
財団法人 東方医療振興財団 理事
財団法人 柏の会 監事
国際腎臓学会、アメリカ腎臓学会など
〈略歴、研究歴など〉
1983年 北海道大学 医学部 医学科 卒業
1983年 東京女子医科大学 第4内科 入局 研修医
1985年 東京女子医科大学 第4内科 医療練士
1986年〜
1990年 東京女子医科大学 大学院 医学研究科
1990年 東京女子医科大学 第4内科 助手
1993年〜
1995年 Harvard Medical School & Massachusetts General Hospital 留学
2001年 東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター 内科&血液浄化部門 講師
2002年 東京女子医科大学附属成人医学センター講師(兼任)
2003年 東京女子医科大学附属青山女性・自然医療研究所 副所長・講師
(東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック 所長)
東京女子医科大学附属東洋医学研究所 講師(兼任)
東京女子医科大学附属青山病院 講師(兼任)
2004年 東京女子医科大学附属青山女性・自然医療研究所 自然医療部門 助教授
東京女子医科大学附属東洋医学研究所 助教授(兼任)
東京女子医科大学附属青山病院 助教授(兼任)・現在に至る
元 東京都老人総合研究所 客員研究員
〈西洋医学の専門領域〉
内科、腎臓病学、血液浄化、膠原病、高血圧
〈主な著作〉
心もからだも「冷え」が万病のもと(集英社新書)
常識力@健康.com(講談社)
冷え取り美人(アスペクト)
ナースのための補完・代替医療の理解とケア(学研)
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